ヤマガラ_22 ― 2012年09月23日
「 彼女の息子_3 」
さて 彼の一番の罪過……餌箱を占領し始めた!?
エサ場には 今まで たくさんのヤマガラ・シジュウカラが来たけど
常に暗黙の掟があるがごとく 餌のとり方には秩序がありました
彼らが 餌箱に入るのは いつも一羽だけ
でも 餌をとるとすぐに飛び立ち 次の一羽が 同じに繰り返す
回転が早いので 数がいても 渋滞になることはない
また エサ箱の中で 食べないので 糞も殻も撒き散らさない
結果 餌箱の周辺は 驚くほどきれいでした
ところが あのバカ息子が この掟を破った
エサ箱の縁で殻を割り その場で中身をついばみ
とにかく 次の者に 譲ろうとしないばかりか 次が来ると威嚇する
そのうち シジュウカラが このバカの真似を始めた
そして さらに 他のヤマガラも後に続いた
こんなことは 餌付け開始以来 初めてのことでした
結局 そのシーズンは 最後まで このことが尾を引き
エサ場は 糞と殻が散乱 いざこざも絶えず 殺伐とした雰囲気でした
幸い 次のシーズンには 持ち越さなかったので ホッとしましたが…
ところで その後の彼ですが
次のシーズンに たった一度だけ 姿を見せました
3羽くらいのグループで来ましたが
あの独特の餌の食べ方をしてたので 一目瞭然
ただ 餌箱を占領するようなことは もはやなかったので
たぶん大人になったんでしょう
一方 私に対しては 相変わらずの無視 …それとも忘れたんでしょうか
ま どちらにせよ また来て欲しいものです
彼は あの彼女の血を引く 唯一のヤマガラ まだ 期待してます
ヤマガラ_21 ― 2012年09月22日
「 彼女の息子_2 」
さて 彼女の息子が 完全に独り立ちしてからの お話ですが
ここから先は 私は 彼を あえてバカ息子呼ばわりします!
観察結果が先になりますが いい意味で 若者らしいとか ヤンチャとか
悪くいえば 立ち振る舞いが かなり粗暴で… たぶん バカ
まず 餌の食い方が たいへん行儀が悪い
彼らは普通 小枝の上で 脚でヒマワリの種を押さえながらも
安定した無理のない体制で 殻を割り 中身をついばむ
ところが彼の格好は 体全体を後に傾け まるでキツツキのような格好
殻を割る打撃も凄い 力まかせ といった感じ おまけに
鉄骨の上でも これやるもんだから 時々 天を仰いで口開けて ボーッ
あれは明らかに脳震とう …バカじゃないの こいつ
彼らが細い枝の上でヒマワリの種を割るのは 枝に弾力があるから
くちばしでの強い打撃も 枝の揺れが それをやさしく受け止めてくれる
独り立ちしたら それくらい 自分で学べ…ってんだ バカ息子
幼鳥のうちだけかと思ってたら そのシーズン中 ずっとやってました
ところで 独り立ちしてからは ますます 私から離れていきました
攻撃的な態度を見せることもない代りに 手に乗ることもなかった
…がっかりしました
ヤマガラ_20 ― 2012年09月21日
「 彼女の息子_1 」
出来た親には 出来た子供…と期待したいところですが
人間同様 ヤマガラの世界でも なかなかそうはいかないようです
彼女が二度目の子供を連れて来たのは 4シーズン目でした
その子の成長は 幸運にもそのシーズン通して観察することができました
最初はまだ自分で餌をとれず 枝の上で親を待ち 親が来ると餌をねだる
そんな微笑ましい光景が毎日みられました
そして そのうち徐々に独り立ちし 親離れ
ついでに 最後の親離れ子離れの劇的な瞬間を期待したんですが
それはあったのかどうか 残念ながら 見られませんでした
さて その子育ての期間も 彼女は私の手から 餌をとり続けていて
彼女の子供は その光景を いつも見ていたわけですから
私としては あの子が 他のヤマガラよりは より早くより深く
私に馴れてくれると 大きな期待をかけました
彼女以降 彼女以上に馴れてくれるヤマガラは 現れてなかったからです
ところが 彼(とりあえず息子扱い)は違いました
馴れていなくはないんです 少なくとも私を恐れていない
自分で 餌箱に降り出した頃から すでに 私に反抗的でした
そして 結局一度も私の手から 餌をとることはありませんでした
それどころか 背後から飛んできて 私の耳元をかすめ飛ぶ
というような攻撃的な芸当を 何度かやられました
さらには 股抜けも… それ以外は まったくの無視です
あれは もしかしたら 嫉妬だったんでしょうか
ママを とられたと勘違いしたか
私は 相当嫌われていると判断せざるを得ませんでした
(続く)
ヤマガラ_19 ― 2012年09月19日
「 貯食 」
ヤマガラの貯食 というのはけっこう普通にみられる行為らしいです
私は 餌付け5シーズン目にはいって 初めて知りました
というのも それまで 彼らは そういう行動を全然みせなかったから
初めて確認したのは
例の彼女が それまでとまったく違う行動をとり始めたのがきっかけです
普通 彼らは餌箱から餌をとると 近くの小枝まで持っていき
そこで殻を割って中身をついばみます その間けっこう時間もかかります
ところが 5シーズン目の始めから 彼女は 餌をとると
真っすぐ林の中に飛んでいって すぐに折り返してくるようになりました
それもかなり頻繁で 時には くちばしに土をつけて帰ってきたりする
これは変 ということで 調べたら そういう習性があると…
でも なぜ それまでのシーズンに見られなかったんでしょう?
それと 彼女が始めると 他の連中にも 瞬く間に広まりましたが
これは流行みたいなもん?
ま それはそれとして このとき 一つ楽しみもできました
この様子だと 夏になったら 林の中にヒマワリが咲くんじゃないかと
でも 次の夏 残念ながら林の中のヒマワリは一つも実現しませんでした
忘れることなく 全部食っちゃったみたいです
ところで 困ったことが一つ
例の彼女 何を思ったか その後 仕事場の中にも貯食し始めました
壁の隙間や木工機械の穴 特に機械の穴は困りもんです
何か調子が悪いな…と思うと ヒマワリの種が詰っていたりする
あれ以来 いまだ変なところでヒマワリを見つけます
外に貯めた分を忘れずに食うなら
仕事場の中のも忘れるなよ 窓は開けてあるんだから…まったくもう
ヤマガラ_18 ― 2012年07月15日
「 ニート 」
ヤマガラの餌付けを始めた当初 これがもとで 彼らがエサ場に入り浸り
やがて 身を持ち崩すのではないか などとつまらぬ心配をしておりましたが
彼らは 私が想像してたより遙かに 賢明で したたかでした
彼らのフィールドは あくまでも山にあることを 彼ら自身がよく知っていて
ここは 単なる通過点 一日に2,3回訪れる エサ場の一つにすぎないのです
でも 何処の世界にでも 例外はいるもので… いました たった一羽だけ
最初のシーズンは 気がつきませんでしたが 2シーズン目からずっと
だから ここに来て 確実に確認できてる中では 例の彼女に次ぐ長さです
彼は とにかく シーズン中 そして 一日中 ここに張り付いてる
朝 気がつくと居て 夕方 薄暗くなっても 居る
いつも単独で 私からも 確実に 一定の距離をとって
たとえば 彼と一対一になっても 知らぬ振り もちろん 手には絶対来ない
確かに 他のヤマガラ達も 私をうまく利用してるなあ と思うのですが
こいつのやり方は 陰気で 露骨で 相手を苛々させる
楽しい楽しいヤマガラ達との一日も こいつのお陰で気分半減です
そんな姿をみてると 私も つい毒づいてしまう 「働きにいけ この野郎」
それで ついた名前が ニート 私が 唯一 名前をつけたヤマガラです
あるとき 私が外にいると 彼一羽だけ 仕事場の中に入っていきました
とっさに これはチャンスと思い 閉じこめてやりました
それから 2時間ほど 仕事しながら ネチリネチリと追い回してやりました
彼も さすがに焦ったようで 終いには 半口開けてゼエゼエいってる感じ
どうだ これで懲りたろう と開放してやりましたが
その後も 相変わらず 居りました
あいつ…筋金入りです
それ以降 私もちょっと大人になって あれも個性 と思うことにしました
ただ 昨シーズンは 他のヤマガラ同様 彼も 一度も 見かけませんでした
さて 来シーズンは 来てくれるんでしょうか…
(参考)彼女
http://dosyakuzure.asablo.jp/blog/2012/04/12/6408940
ヤマガラ_18 ― 2012年07月12日
「 懲りないヤツら 」
ヤマガラにしても シジュウカラにしても 常連ともなると
屋内に 平気で 餌をさがしに進入してきます
私としても 古びた仕事場ゆえ それを とくに咎めたりしていません
むしろ 近年では 野生の猿が エサ場を荒らすこともあるので
留守の時などは 餌を屋内に置いて 小窓を少し開けておくなどしてます
そんなとき 私の仕事場は 彼らの独擅場で かなり自由にやってるようです
私が 突然帰宅すると 数羽の群れが 驚いて大騒ぎ なんてこともあります
それでも 常連の連中は心得たもので 5~6センチしか開いてない窓の隙間を
器用に 飛びながら すり抜けて出て行きます
ところが 問題なのは 屋内デビューしたての新参者で
ほとんどが 透明の窓ガラスに激突 …ま 洗礼みたいなもんです
でも まだ これで死んだヤツはいません 彼らは けっこう丈夫みたい
それでも たまに運の悪いのが 脳震盪を起こします
一番傑作だったヤツは 激突した後 運良く 傍の桟に留まったんですが
しばらく口を開けて天井を仰いでいたかと思ったら スローモーションみたく
ゆっくりと後に傾いて そのまま床に落ちてしまいました
これはちょっとダメかなと思いつつも 窓辺に 置いておいたら
そのうち ヒョコッと立ち上がって 飛んでいきました
ところで そのとき 彼の白いほっぺに 赤マジックで紅さしといたんですが
次の日も きっちりと来てました 懲りないヤツです
<関連>
http://dosyakuzure.asablo.jp/blog/2012/05/10/6441622
ヤマガラ_17 ― 2012年07月05日
「 仮病 」
野鳥と身近かにつき合うなかで けっこう気になるのが 彼らの健康状態
特に 鳥インフルエンザのニュースを聞いたときなどは かなり気になります
もし インフルなら すぐに周りに感染して このエサ場も即閉鎖でしょう
そんな私の心理を ズバッと突いたヤツがいました
あるとき エサ場にいくと 羽毛を逆立たせて 丸くなって じっと動かず
小枝の上で うずくまってる 目も閉じてるような…
小鳥をペットにしている人なら 経験があるかと思いますが
彼らが体調不良のときのサインです
ついに来たか… と思ったものの 正直何もできません
追っ払うわけにも行かず かといって 保護して何かできるわけでもなく…
結局 観察してるだけ そんなのが3日ほど続きました
その間 いつも同じ場所 同じ様子
他の連中の様子も 同時に観察してましたが 取り立てて変化なし
そのうち これはおかしい と思い始めました
それで エサ場を離れる振りして 隠れて見ると
彼の 逆立てた羽毛は サッと和いで 普通の体型に戻り
他の連中と同じく 軽やかに エサ箱に 舞い降りました
私が戻ると また 同じことをやってる
一杯食わされた!
どうやら 私が エサ場にいるときだけの パフォーマンスだったようです
なんのためだか知らないけど ホントに紛らわしいヤツ…
彼が来てたのは ワンシーズン しかも 1ヶ月程度だったと思いますが
その後どうしたか
本当に病気になっちゃったんじゃないか とか
あのパフォーマンス ここ以外に披露できる所があるんだろうか とか
いろいろ心配しております
ヤマガラ_16 ― 2012年06月23日
「 気骨 」
エサ場に集まってくるヤマガラは み〜んな友好的な連中ばかり…
というわけではないようです
普通は 朝 出勤と同時に エサ箱をいっぱいにして 口笛を吹きます
すると いつも控え目なシジュウカラが まず先に集まってきますが
エサのそばには私がいるので 近くの小枝に止まって 待機してます
ヤマガラが来るのは その後で 三々五々に集まるといった感じです
来るとすぐに 私の手に来れるヤツは 手からエサをとり
来れないヤツでも 2,3メートル離れたエサ箱から エサをとっていきます
そのとき 馴れてはいても ほとんどの連中は 私を警戒しているので
私が視線を向けると サッと身を引いて 近くの小枝で私の動向を窺います
ところが その中で一羽だけ まったく違う行動をとるヤツがいます
まず最初に 林の中から 真っすぐに凄い勢いで 私に向かって飛んで来ます
これはたまたまでなく 毎回のことで
わかっていても いつも首をすくめて 目を閉じてしまいます
彼らは 短いスパンで 羽ばたきと翼を閉じた滑空を繰り返して飛ぶのですが
翼を閉じたときを真正面から見ると真ん丸で 弾丸でも飛んでくるようです
こうやって まず挑戦的に 私に一発かませますが
直前できびすを返して エサ箱に向い その後は まったく私を無視します
私が視線を飛ばしていても 淡々と エサ箱に降りて来るところを見ると
彼は かなり私に馴れているはずです それなのに この態度!
でも 彼は 私の好きなヤマガラの一羽です
なんというか 「人間なんぞには 絶対に馴れてやらねえ!」とか
「絶対に 人間の手から エサはとらねえ!」というような気骨を感じるのです
ヤマガラにしとくには 惜しいヤツだと思います
でも 残念ながら 彼もワン・シーズンだけの付合いでした
ヤマガラ_15 ― 2012年06月14日
「 個体識別 」
エサ場には 多いときで 15〜20羽ほどのヤマガラとシジュウカラが来ます
その彼らの全てを識別できるわけではないけど
観察してると その3分の1位はわかるようになります
まず シジュウカラは ある程度 目で判断できます
胸から腹にかけての白地の上に はっきりと黒い紋様があるんですが
それが 一羽一羽すべて違っているので わりと分かりやすい
でも シジュウカラの連中は いつも愛想無しで ほとんど傍に来ないので
識別してもつまらない いまだに気にかけてるのは たった1羽だけです
一方 ヤマガラの方となると 識別できると彼らは実に楽しい
ただ 目視では ほとんど無理です
体の大小などは けっこう個体差があるのですが 体の紋様はまったく適当
みんな似たり寄ったりで あまり特徴がない
確実に識別している1羽の 2シーズンの写真を比較したことがありますが
どう見ても同じには見えなかったこともあります
それでは 何で識別するかというと 馴れ具合 それと個性
馴れ具合は微妙ですが ここまで来るヤツはアイツしかいない…とか
それよりも個性 これが実に豊かで 識別するには一番確実です
手に乗るヤツは もちろんですが
傍に来れない連中も 彼らなりに馴れていて 単なる警戒心だけではなく
離れた所で いろんな個性を見せてくれます
たぶん 彼らは根っから楽しい連中なんだと思います
<関連>
http://dosyakuzure.asablo.jp/blog/2012/04/23/6422724
http://dosyakuzure.asablo.jp/blog/2012/05/19/6449816
ヤマガラ_14 ― 2012年05月31日
「 魔が差す 」
一番馴れてる彼女の話
いつものように 彼女が私の手に止まり 餌を選り始めました
他のヤマガラは 餌をくわえると 急いで飛び立ちますが
彼女の場合は じっくりと時間をかけて 良い餌を選びます
それは いつもと変わらない光景でしたが 私の方がちょっと変でした
彼女の脚指の一本が 私の指と指の間に すっぽりと入っているのを見て
そのとき 本当に 本当に魔が差しちゃった
私は 指にきゅっと力をいれて 彼女の脚指を挟んでしまいました
なんか フッと 簡単に彼女を捕まえられそうな気がしたんです
そしたら 彼女は 騒ぐでもなく くわえていた餌をポロッと落とし
じっと 私の方を見ました
お前は そんなことをするのか? と言いたげな目
私は我に返り なんとも気まずい雰囲気
指の力を抜くと また餌をくわえ直して 何事もなく飛んでいきました
意志疎通の出来ない動物と仲よくなるということは
仲よくなった時点で 暗黙の約束事が 自然に出来上がるんでしょうね
それは 箇条書きにするような約束事でなく 全てにおける信頼…
彼女と私の間には それが出来上がっていたのに 私が反故にした
本当に反省しました
さて その後ですが
2,3日 間をおいて また 彼女は 私の手に来るようになりました
いや ”来てくれる”ようになりました
ありがとう… 君は 本当に出来たヤマガラだ…
(参考)彼女
http://dosyakuzure.asablo.jp/blog/2012/04/12/6408940