道具4_手鋸は難し2012年03月17日

手鋸の身を曲げる

 なんだこの野郎フニャフニャしやがって!!  と怒ってはいけない。 真っすぐ挽けないのは貴方のせい、というか、相当訓練していなければ真っすぐ挽けなくて当たり前。実は、木工の手工具の中で「鋸」が一番難しい。

 普通、木工機械や電動工具・手工具を問わず、真っすぐ切ったり、平らに削ったりすることを容易にするための仕掛けがついている。それがいわゆる「定盤」だが、その形はさまざま。たとえば電動工具の丸鋸は、真っ平らな定盤の真ん中から回転する丸い刃が出ていて切り口が直角、あるいは、任意の角度で切れるようになっている。さらにその定盤の両側も刃と平行になっているので、そこに真っすぐな定規を沿わせれば難なく材料を真っすぐにカットできる。
 カンナだってそうだ。2つの定盤の間から刃が出ていて、その定盤を材料に押し付けて移動させることで平らな面を削ることができる。2つの定盤のレベルをわずかにずらすことによって削る厚みだって調整することができる。
 その他、手工具のノミだって… 一見、刃と握りだけの道具のように見えるが、実は刃の裏が真っ平らな定盤になっている。

 という具合で、刃のついたほとんどの工具の刃の周りには、真っ平らな面や真っ直ぐな直線があり、そこがその工具の定盤だと思えばほぼ間違いない。そして、この定盤を意識しながら道具を使うことによってより正確な加工が可能となる。昨今、誰でも長い修業をしなくても木工や家具職人ぽっくなれるのは、とくに電動工具についているこの定盤の進化のおかげである。

 一方、手工具の鋸となるとちょっと勝手が違ってくる。定盤がないというわけではないのだ。というより、鋸の身(薄い胴体全体)自体が定盤なのである。厄介なのはこの定盤がフニャフニャしてるということである。そして、使い手は、このフニャフニャを制御して真っ直ぐな定盤にする術を身に付けていなければならないということ。鋸が難しいのはこのためである。それじゃ、もっと厚くして固くすれば…なんて言わないで。手鋸の身はあの薄さだから堅い木が切れる。厚くちゃとてもとても…。 また、確かに鋸身の背に真っ直ぐで固い金具を付けたものもある。でも、それだと、深さが決まってしまう。固くすれば、何かしら支障が出たり、用途が決まってしまうのだ。

 ところで、お前はどうなんだって聞かれたら…正直逃げ出したい… 一応、弁解を聞いてくれますか? …だってェ、電動丸鋸や昇降盤で事が足りちゃって、手鋸使う機会なんてほとんど無いんだもの…上達しろって言う方が無理っすよ。



写真/手鋸の身を曲げる

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